北アイルランドの海岸線に8キロにわたって続く世界遺産ジャイアント・コーズウェイに、新たにビジターズ・センターを計画するというコンペに提出された案である。 ジャイアント・コーズウェイとは、巨人によって敷かれた土手道という伝説を持つ、6000万年前の地殻変動によって出来た奇岩群のことで、この六角柱の石が集合して出来た形状を柱状節理と呼ぶ。このような特徴的なランドスケープを持つ土地に、建築の文脈を持ち込むのでなく、石の節理からつくる建築を提案した。まず、32m角の立方体を置き、その中を、結合ルールを持ってできた石の結晶同様に、直径1mのリング構造で充填する。さらに立方体の中に諸機能を含むコアが置かれることによって、その周辺のリングが浸食される。結果、残されたリングとコアとの間に洞窟のような大空間ができる。一方、構造的に負荷の大きい立方体壁面の中央やコーナー部分には、リングが多く残ることになる。 コア内部は学習室や事務所、コア上部とシェルの間の空間は、展示スペースやレストラン等となる。そして、コアが地面に置かれることでできるその隙間にはバスが直接乗り入れ、訪れる人々をジャイアント・コーズウェイへといざなう。
写真撮影: Jun Aoki & Associates